ブックタイトル日本ねじ研究協会 1979年10月

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概要

日本ねじ研究協会 1979年10月

一みを申し上げたが,殿下はうなずかれて,海野発明協会会長に「あなたは,バラまくのが得意だからお金は貯りそうにないね」などと,軽い冗談をおっしゃり,一同は思わず笑を誘われた。械の上にお顔を寄せて覗き込まれたり,指さして細部の説明を徴されるのである。ご視察の進みかたは,さながら清い漢流にそうて下る思いであった。ある時はさらさらと川瀬を流れ,あるときはご昼食後,記念植樹をお願いした。殿下には松渕にたゆたい,また瀬々にかかる……。(私宅).梅(会社),妃殿下には凄好みと承っていた椿の若木を用意していた。殿下は海野夫入に「妃殿下の代行を……」と笑いながら論っしゃり,鍬をとられた。ご視察も順路なかばを過ぎたころ,「工場が綺麗なのは切り屑が出ないためか」とのこ下問があった。私は塑性加工の最大の特徴である切り屑が出ないことを,改めてご説明申し上げたが,殿下終ってからお手すすぎの水を差しだすと,結構のこのこ一言で「私の今日の願いは成就した。こと手ぶりで断られ,その水は植えたばかりの松のれまでの長い努力は報いられた……」と,胸に迫根本にかけられた。そのこだわりのないご動作のひとつひとつが,何と自然であったことか……。まる感激を覚えた。殿下はやはり見るべきポイントはしっかりと捉えてご覧になっていたのである。民間人の表現では「ご気さくな……」の一語につ殿下がご関心を澄示しなされたのは,ナショナきる。ル社製1000S番コールドホーマーや特殊形状部博学博識の殿下品の塑性加工工程,わが社独自の技術で開発したカムス機(座金組込転造機,毎分能力1600本)工場ご視舞中の殿下のおみ足運びは速かった。等々であり,超高速ヘツダーのリズミカルな稼働日頃テニスで鍛えた私も,時として戸惑うほどで音にもご満足のようであった。最終検査工程でおあった。み足をとめられ,女子社員がゲージを使う手許を殿下は機械のことにも大そうご精通であらせられ,私がご説明する前に「これはヘツダーだな」とおっしやった。ヘツダーの原理や機構についてお話するつもりが,その一言に腰を折られてしまい,一分間の回転数や性能の説明だけにとどまってしまった。じっと見つめていられるお姿が印象深く,いまでも私の瞼に焼きついている。殿下は庶民的な一面もさて,お客様1千余名をご招待した式典が始まり,私はあいさつすべく壇上に立った。一瞬私殿下はどこで機械工学を澄学びになったのだろの頭は真空状態におちいり,言葉につまってしまうか。その博学ぶりに圧倒された私は,そのことった。をお伺いする心の余裕を失っていた。思うに,海それは,午前中の私宅午後の工場ご案内を通軍兵学校から海軍大学へお進みになった殿下は,じて,私は殿下にお話し申しあげる一言一句に気艦船,航空機をはじめ各種兵器類のメカニズムについて,一流の学老・技師たちのご進講を受けらをつかい,不敬にわたらぬよう心を砕いた。そのへんげんせきご反面,殿下の何のこだわりない片言隻語,わだかれたに違いない。私の説明が終ると「つぎは……」と促される。まりない一挙一動に私は感動し,目威厳に打たれ続けたためである。に見えないご私は失礼ながら「殿下には,ほんとうにご理解い殿下のお言葉の端ばしから,博学博識にして民ただけたのだろうか」と思うほど,順路の先ざき情に通じられたお人がらが,あたかも玉のこぼるへお進みになるのである。しかし要所要所では機るが如く伝わり,私は圧倒されてしまったからで一550一日本ねじ研究協会誌10巻10号(1979)